column  辛夷(こぶし)

辛夷(こぶし・マグノリア) モクレン科 Magnolia kobus 

 

~農事歴/春を告げる花~

 

 かつては農業での播種の目安に桜が使われていました。そして、桜の開花が遅い北国では、辛夷が「種まき桜」とよばれ、その役目を担っていたのです。

 早春に、葉に先立ち咲く香りのよい純白の花。現在都心部では、「花」というと嗜好品と捉えられることが多いですが、四季の気象条件の変化に大きく影響される農業にとっては、野生の花がまた気温や日照条件等を映す指標となっていたのでした。

 また辛夷は、田の神が宿る依代といわれ「辛夷の花が多い年は豊作になる」等の言い伝えが各地できかれます。農業に携わる人々にとって、この白い花が、作物の成長の始まり、そしてやがて来る実りを象徴していたのでしょう。

『俳諧名知折』

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